鯉のぼりの一番上に配置される五色の吹き流し
これは、言うなれば魔除けの色です。
五色というのは古来中国の「五行説」に由来しており、
水・金・地・火・木を意味する色で、現世をなす大事な要素と考えられています。
日本の神道でも同じような深い意味を持つ色です。
古代中国発祥の五行説というと
現代人である私達には縁遠いような気がしますが、
ちょっと紐解いてみると結構私達の生活に根付いた風習が浮かび上がってきます。
超簡略な五行説の雑学
●五行説の基本
五行説では、 木火土金水がそれぞれ「相生(そうじょう/互いを生みだし伸ばし合う)」と「相剋(そうこく/互いに制し滅し合う)」の相を持っています。木は火を、火は土を、土は金を、金は水を、水は木を生み、逆に木は土を、土は水を、水は火を、火は金を、金は木を制するとされます。これは、昔話の「ねずみの嫁入り」や旅人の服を脱がそうとした「太陽と北風」のお話ととてもよく似た発想です。
五行説における五色の意味(大雑把ですが)
■青–春(1.2.3月)、 東
■赤–夏(4.5.6月)、 南
■黄–土用/季節の終わり18日間 中央
□白–秋(7.8.9月)、 西
■黒–冬(10.11.12月) 北
*五行説では、旧暦を使用しています。
上の表を見ると解るように、五行説では、青は春を意味しますから、「青春」と言う言葉は、五行説に由来するとわかりますね。
他にも「朱夏」「白秋」「玄冬(「玄」は「玄人=くろうと」と言うように「くろ」を意味します)」など、
私達にもお馴染みの言葉です。
五行説とキトラ古墳
奈良県明日香村のキトラ古墳の四方の壁には、東に青龍、南に朱雀、西に白虎、北に玄武(亀と蛇の合わさったような聖獣/玄武の「玄」は、玄人の玄「くろ」を意味します)が描かれていました。
土用って何?
「土用の丑の日」 は皆さんご存じですね。土用とは、各季節の終わりの18日間を指します。
この期間は季節の節目であり、各季節の力の影響が弱まり、次の季節の力が強まり始める時で
人間にとっても自然にとっても、不安定な時期でもあります。
特に夏から秋にかけて体力が弱まっている所にこの不安定な土用の自然の波動がやってくると、人はまいってしまうということで、体力を付けて頑張りましょうと、精の付くうなぎを食べると言う説があります。真偽のほどは解りませんが。(^^;)
●五行説による
五色の意味
青—木/春
赤—火/夏
黄—大地/人
白—金/秋
黒—水/冬
五行説と除夜の鐘と節分の豆まきの関係
五行説は、節目・境目というのをとても重要視しています。
五節句の中の端午(端/はし、境目の意)もそうですが、大晦日や節分も一年の境目に当たります。
それぞれの季節の影響力の弱まる境目や端には、鬼門が開くと考えられており、これを封じることを行わねばなりませんでした。
特に日本では、五行説と神道・仏教が融合して、除夜の鐘や豆まきが生まれたと考えられています。
五行説で季節分けを考えると、12月までが冬、1月から春になります。
新春を迎えるにあたり、この古い冬の堅く冷たいの気を押さえ込み
魔や鬼の嫌う鐘の音で鬼門を封じ、新しい春の再生を促すために除夜の鐘を突く、と考えるのだそうです。
節分の豆まきも同様です。節分は旧暦の正月の前夜です。
旧暦の行事も大切にする日本では、この旧暦における年の境目に、まさに鬼門が開いて鬼が出てくるのを封じ、
古い季節の気を豆を投げて痛めつけて弱め、新しい季節の再生を促すと考えられています。
五行説は、結構科学的?(「物忌みの五月」とは、なんぞや)
五行説によると五月は「物忌み」と、なにやら怪しい時期のように言われています。
言葉は怪しいですが、思い起こすと結構科学的です。
春は、虫が盛んに活動し始める季節であり、農耕民族の田植えや種まきの多いこの時期は、
植物に付く虫だけでなく、田や水に入ることでかかる皮膚病や寄生虫などは命に関わることもあり、
非常に気を遣わなくてはならなかったのです。
それゆえ薬湯である菖蒲の湯に浸かったり、
解毒作用のある笹で作ったちまきや、滋養のあり解毒作用もある餡の入った柏餅を食べることにより、
体を浄め体力をつけ、健康を保つように気を配ったと考えられます。
それだけでなく、芽吹きの季節であると同時に生殖の季節でもあるこの時期は、
ほとんどの動物の情緒が通常より不安定になり、注意力も散漫になります。
現代でも五月病などと言われるように、天候や気温や環境の著しい変化で、
ホルモンバランスも崩れたり、鬱にもなりやすいといわれていますよね。
それゆえ端午の節句の時期になると
野に出て摘んだ薬草をご近所や友人、使用人にも配ったりして、
ともに身の穢れを祓い、心身共に健康であることをお互いに願いあったのだと思います。
昔の人って、なんだかとっても、優しいですよね。(^^)
*五行説は、本当は陰陽について語らねばならないのですが、
難しくなりすぎてしまうので省略しました。御容赦下さい。